早稲田大学西門のすぐそばにある「三品食堂」。
昔から学生に親しまれてきた牛丼屋さんとして有名で、いつか機会があったら行ってみたいなあ、と思っていたのだが、早稲田松竹で「エヴァンゲリオン新劇場版」が二日間で4本全部観れるという企画をやっていたので、これを利用して牛めしも食べてみることにした。
早稲田松竹からは歩いて5分くらいかかるが、本当に早稲田の西門のすぐそばで、その古いお店は、学生さん、いらっしゃいとばかりに両手を広げて建っていた。
メニューは、牛めしとカレー、それにカツを主体に、これの単品だったり、組み合わせてカツ牛飯とか、カツカレーとか、色々あるのだが、僕の目を引いたのは、「あいがけ」だ、
一皿に牛めしとカレーライスを半分ずつ持ったものなのだが、いく前から、今日はこれを食べようと決めていた。
以前、仕事の関係でよく築地に行っていたのだが、築地場外市場の市場通りに、この「あいがけ」を出すお店があった。ご夫婦でやっていたが、ご主人は東大卒の方で、この店が出す「あいがけ」が、牛丼の甘みとカレーの辛味が、スプーンで一緒にすくって食べるとなんとも言えず美味かった。
しかし、この店がもう何年も前に閉店してしまって、あの至極のスプーン一杯が食べられなくなってしまったのだ。
かつてはこの牛丼屋さんを筆頭に、築地場外には面白いお店が色々あったのだが、ほとんどなくなってしまい、築地場外もずいぶん味気なくなった。
そんな味を求めて、僕は「三品食堂」で「あいがけ」を注文した。
「はい、あいかけね」とおかみさんが持ってきてくれたあいかけにスプーンを伸ばす。
牛丼とカレーライスを半分くらいずつ一緒に載せて食べるのが良い。
一口頬張ったその味は、まさにあの、築地の「あいがけ」だ、と思った。
牛丼の甘味と、カレーライスの辛味。
薄く切った豆腐に牛丼の味が滲みてるのがポイントだ。
きっとあの味とは違うのだろうが、僕には同じ味に思えた。
味覚は、人の心をタイムスリップさせる。
あ、そうだ、あのお店の名前は「大森」だった。
おじさん、元気かなあ。