誘拐もののミステリー。
「決まったよ」
いよいよ名人戦への挑戦権をつかんだ河辺真吾8段は、妻の陽子に電話を入れた。
勝負師の妻になった陽子は、父の内田八郎の求めに応じて、激励会の準備をしようと忙しい。が、その忙しさの中で、娘の万里が誘拐される・・・
犯人からの身代金の請求と受け渡し。
警察の犯人確保失敗。
が、何日経っても万里はなかなか解放されない・・・
淡々と物語は進んでゆく。
二転三転のスリル満点、と言うわけではないが、しっかりと読ませるだけの深みがあります。
あれ、なんだ、あまり盛り上がらず、このまま終わりかなあ、と思わせられる終盤、思いもよらない展開となり、最後はしっかり満足な読了感を味あわせてくれます。
が、「殺人の棋譜」と言うタイトルから、将棋がらみの面白さを感じさせてくれるかと言うと、それはちょっと疑問。
かつて、団鬼六の「真剣士小池重明」で味わったような、ドキドキワクワクの将棋の世界は感じられない。
別に将棋を絡める必然性もないかなあ、と言う気がする。
とはいえ、さすが江戸川乱歩賞受賞作、よく練られた話です。
一読の価値ありますよ。
これもkindle unlimitedに入っています