昨夜は夜中、ナースコールで点滴に麻酔薬を入れてもらったおかげで、そのあとはぐっすり眠ることができた。
手術の後なのに、総じてそれほどの痛みもなく、患部は、ほとんどじわーっとした熱さだけで済んだのは、ちょっと驚きである。
おはようございまーす。大丈夫すか、痛みはありませんか?
昨日、手術室から車椅子を押してきてくれた看護婦さんの朝の回診だ。
歳は25〜6歳ぐらいのくりっとした目がとても可愛らしく、ちょっと生意気そうな唇が魅力的だ。
「おかげであの後、すぐに麻酔が効いて、よく眠れたよ」
「あ、良かったです」
この看護婦さんから今朝は、今年で一番いいニュースを聞いた。
「今まで聞いた中では、透析歴40年の患者さんもいましたよ」
え、40年! やった! ということは、体に気をつけてればそれだけ生きられるってことか。40年後なら、俺は96歳。十分天寿を「全うできるじゃないか!
嬉しい!希望が湧いた。これほどの言葉は、今までない。
かつて、三井記念病院に入院していた時に、透析をしようと医者にも看護婦にもやたらと勧められ、それを渋る俺に、看護婦さんが「透析しても、10年生きた人がいますよ」と言った。
慰めるつもりで言ったのだろうが、10年生きられるなんて、嬉しくもなんともない。
10年しか生きられないのか!
余命10年のガン宣告と一緒じゃないか。
可愛い看護婦さんだったが、ひどいことを言うもんだと思った。
しかし、今回は、まったく意味が違う。40年なら、何にも問題ない。
十分に人生を楽しめるじゃないか! 万歳!
話は全く変わるが、今朝、担当の先生から、初針刺(はつせんし)はうまく行けば水曜日ですかね、と言われた。
なんだか、ちょっと嬉しそうに言われた。
はつせんし?!
普通、初なんとかってのは、嬉しいイベントに使う言葉じゃないかね。
初体験、初デート、初ビール、初詣、初登校、初登頂、どれもこれも、胸がワクワクするようなことばかり。
それが、初針刺とは!
なんか、発音だけ聞くと、楽しそうに聞こえてしまうのには、苦笑いを抑えられない。
まあ、ドキドキすることには変わりないが、このドキドキは恐怖のドキドキだ。
水曜日には、恐怖の大王が降ってくる・・・・・
でも、40年生きられるもんね。
元気が出た手術翌日の朝だった。